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観測者の机のフラットレイ。真鍮のデスクランプ、ヴィンテージの双眼鏡、開いた革表紙の手帳と万年筆、古い新聞紙、コーヒーカップ。
OBSERVATORY / 観測室

家獣は家だけじゃない──
佐世保で20台、車の断熱材が巣材に

観測日:2026年5月22日出典:長崎新聞(5月19日配信)カテゴリ:車両被害家獣ラボ編集部(運営:株式会社ドゥアイ)

長崎県佐世保市の団地で、駐車中の車のボンネットを開けると断熱材が綿状に散乱し、ホースは噛みちぎられている──。約280世帯のうち20台近くが被害に遭ったと報じられた。家獣ラボは、この事案を「家獣の侵入対象が住宅以外にも広がりつつある現象」として記録する。

佐世保・美鳥ケ丘団地で何が起きたか

長崎新聞は2026年5月19日、佐世保市日野町・美鳥ケ丘団地でイタチとみられる野生動物が駐車中の車のエンジンルームに入り込み、巣作りのため断熱材を持ち去る被害が相次いでいると報じた。団地は約280世帯。少なくとも 20台近く が被害に遭っているという。

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今月上旬 情報提供住民がボンネットを開けると、ガラス繊維を綿状に加工した断熱材が散乱し、ウォッシャー液のホースが噛みちぎられていた。
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町内会の寄り合い 別の住民から「修理代に3万円かかった」との報告。被害は1戸の問題ではなく、団地全体の現象として共有された。
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数週間で2回被害の住民 「1回目は衝突防止の安全サポートが断線し、2回目は断熱材がむしり取られた」。1台の車が短期間で繰り返し標的になった。

長崎新聞が同市の九十九島動植物園(森きらら)に残されていたフンを持ち込んだ結果、イタチもしくはテンと判明している。同園の岩岡千香子次長は、繁殖期の2月ごろから巣作りの材料を探すこと、断熱材の綿は保温性が高く巣作りに最高の素材であること、そして「動物が場所を記憶し再発する」懸念を語った。

家獣の侵入対象は、住宅だけでは済まなくなりつつある

家獣ラボが扱う5匹(ネズミ・ハクビシン・アライグマ・コウモリ・イタチ)は、いずれも「家屋に侵入する哺乳類」として整理してきた。だが今回の事案は、その前提を少しずらす。標的は家ではなく、家のすぐ脇に止まっている である。

車のエンジンルームは、動物側から見れば住宅と同じ条件を備えている。暗く、狭く、雨風が防げて、エンジン熱の余韻で暖かく、断熱材という巣材まで備え付けられている。住宅侵入と同じ生態的論理が、そのまま車にも当てはまる。

JAFも警告:エンジン始動後の発見事案あり

「猫バンバン」は、イタチ・テンの確認にも応用できる

JAFは2020年2月、2020年1月の1カ月間に猫のエンジンルーム侵入に関する救援要請が42件、うち 9件はエンジン始動後に発覚した と公表している。同データは猫が対象だが、自動車メーカーが推奨する「猫バンバン」(乗車前にボンネットを軽く叩く)は、エンジンルーム内に小動物がいないかを確認する習慣として、今回のような小型獣の被害対策にも応用できる動作だ。

加えて重要なのが、イタチ類の法令面である。現行の環境省の狩猟鳥獣一覧では、「イタチ(雄)」と「シベリアイタチ(長崎県対馬市の個体群を除く。)」が掲載されている。ニホンイタチの雌は狩猟対象ではなく、捕獲には原則として許可が必要になる。シベリアイタチ(チョウセンイタチ)は2017年9月の施行規則改正で雌雄とも狩猟鳥獣に指定された経緯がある。長崎県内では、在来のニホンイタチと、対馬以外のシベリアイタチの識別が問題になりやすく、住民が「自分で捕まえてしまおう」と動くと、種や性別を見誤った時点で法令違反のリスクが立ち上がる。

佐世保市有害鳥獣対策室が「忌避剤・センサーライト・音の出る装置で寄せ付けない工夫」を案内しているのは、この法令構造を踏まえた現実的な落としどころでもある。捕獲ではなく、まず 環境側を変えて動物に学習させない。家獣対策で家獣ラボが繰り返し示してきた原則と完全に一致する。

団地住民にとって、この出来事は何を意味するか

修理費は1台あたり数万円規模、安全装置の断線まで及べばさらに上がる。被害が約20台に達した時点で、これは「個別住民の不運」ではなく「団地全体で取り組むべき環境管理の問題」になっている。家獣ラボから提案できる基本動作は、次の3点に整理できる。

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繁殖期の集中タイミング 九十九島動植物園・岩岡千香子次長によれば、巣作りの材料探しは繁殖期の2月ごろから始まり、6月ごろには活動が収束する。今は被害ピークの真ん中。
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車を「動物に教えない」工夫 佐世保市有害鳥獣対策室は、車の下に忌避剤を置く、車の周囲にセンサーライトや音の出る装置を設置する、と具体策を挙げる。動物が「ここは安全だ」と記憶する前に揺さぶることが要点。
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自分で捕まえない イタチは鳥獣保護管理法の対象で、許可なき捕獲・殺傷は原則禁止。長崎県では在来のニホンイタチと、対馬以外のシベリアイタチ(チョウセンイタチ)が混在し、種と性別で扱いが変わる。捕獲を伴う対応は自治体相談か専門業者へ。

被害住民の「市が積極的に対策に乗り出してほしい」という声は、住民個人だけでは追い切れない問題のサイズを示している。一方で、行政の動きを待つだけでは2月から6月の繁殖期は終わってしまう。住民側の日常対策と、自治体・専門業者を巻き込んだ集団的対応の両輪が求められる。

家獣ラボは、家屋に侵入する5匹を扱うメディアとして、今回の事案を「家獣の侵入対象が住宅以外にも広がる現象」の一例として位置付け、引き続き観測していく。次に同じ被害を受けるのは、必ずしも遠い場所の話ではない。

Sources

出典・参考情報

観測室の論評は、家獣ラボ編集部による独立した分析です。一次ソースの内容を要約・引用していますが、家獣ラボ視点の解釈は当該メディアの公式見解とは異なる場合があります。

イタチ被害は、まず正しい知識から

ニホンイタチとシベリアイタチ(チョウセンイタチ)では法的扱いが異なります。家獣ラボのイタチ駆除ガイドでは、性別×種別で変わる扱いの違いと、家・車・庭の対策原則を体系的に整理しています。